やますけ農園
代表 山口英則 さん
農園開始当初、たまごのネーミングは、国産地鶏=「長井生卵(ながいきたまご)」、烏骨鶏=「烏骨鶏卵」でした。「ながいきたまご」は、農園が長井という地区にあることから、そこに生卵をくっつけて、ながいきたまごと読ませたもの。これでも素人なりに、かなり考えに考えて絞ったネーミングでした。烏骨鶏はそのものをストレートに出したいとの思いから特にネーミングなし。いや、本当はいい名前が思い浮かばなかったというところが本音かも?(笑)
振り返ると、「ながいきたまご」のネーミングが刺さったのは地元長井地区の方だけ、それ以外の方には何も伝わらないですよね。
当時のロゴも、自分で考えたイメージを地元のデザイナーさんに印刷物の形に仕上げてもらっただけのもの。HPは、当初からネット販売が主流になるとの思いから、自作のブログでスタートしました。しばらくして、オールインワンのECサイトとの契約に変更しWeb販売をスタートさせました。それから数年経過するも販売は思うように伸びず、運悪く東日本大震災が発生してしまいました。
震災後は原発風評被害により、サイトからの注文はゼロに。その後、発信する内容の充実が必要との思いから、オーダーメイドのHP作成会社に作り直しを依頼しました。担当者は農園まで数回ヒアリングに訪れ、直接会話の上で新HPを作成。かなりの費用をかけました。以前に比べれば、非常に親しみやすいサイトにはなったものの、まだ風評被害の影響も残っており、期待していたほどに販売は伸びませんでした。
その約1年後です、「てまかえ」の永田さんと出会ったのは。
そこから、やますけ農園のリブランディングが始まり、ロゴ、商品ネーミングの変更、コンセプトの整理、HPリニューアルの大改造になりました(※HPは、サイトの構成、サイト内全キャッチ&テキスト、ロゴ、デザインのみ)。
自分自身が把握できていなかったコンセプトや心のうちが明確になり、文章化されたことで、改めて自己分析ができました。ですから、そこから生み出された新しい商品ネーミングは、もちろんしっくりくるもの。特に、自分のストーリーと思いを反映させたことで唯一無二のものになり、その意味では競合が無く、消費者を惹きつけるものになりました。たまごの美味しさ+ストーリーを、自信を持って語ることができるようになりました。お客さまの感動や共感も深みが増し、リピーターからファン化への動きが、大きな変化だと思います。
マルシェなどの対面販売では、とにかくネーミングが目を引きます。あわせて、パッケージデザインは女性向なので、「かわいい~!」という第一声がほとんど。それが購買の大きなきっかけになっているようです。
HPも「すごくいい内容ですねー」との評価が多く、読み込んでからの注文や問い合わせが増えています。メディア取材関係のきっかけにも大きく貢献していて、良質な広告宣伝の役割になっています。
信頼を置いているのは、やはり、仕事を超え、「親身に考えてくれる」点です。私のストーリーや思いを引き出して、最善のものを作り上げていただきました。「対価に対する仕事」だけで考えていては、そこまでできないと感じました。
事業を成長、成功させていく上で、非常に大切です。自分自身のコンセプトをブレさせないためにも。そして、何より、ブランド自体が心地よい自分の分身になります。
今後もお世話になります!
東北地方のこだわりの養鶏農家さんからの依頼でした。
「固定客もついており売上もそこそこあるが伸び悩んでいる。
なんとか現状を打破したい」
立派なHPもありましたが、「平飼い」、「自然養鶏」といった
ナチュラル志向のカテゴリーの中で埋もれてしまっている印象でした。
我々がご提案したのは、大胆な路線変更。
という根本から問い直すブランディングです。
これまで彼が「プロフィール」として表に出してきたものの奥にある
「彼の本当の姿」を引き出す作業が始まりました。
そうした基本的な質問をさらに深く、
Face to Face、対面で「なぜ、なぜ、なぜ」を繰り返しながらお聞きしていきました。
しかし、最初言葉として出てきたのは、
これまで通りのきれいなどこにでもある物語ばかり。
いいえ、そこじゃなくて、もっとホントのところ、もっと本音を!
お会いするたびに、何度も何度も根気良く、
角度やシチュエーションを変えて、お話を伺っていきました。
すると、関係ない雑談時にふいに、「そういえば……」
漏れ出た本音を逃さず、めくれた服の端を引っ張り上げて中身を丁寧に引き出していくと、
ポツポツと素直な気持ちが顔を出してきました。
それらをつなぎ、さらに引き出しながら、全体を紡いでいきました。
そうして出てきたのは、
という本音でした。
ヨーロッパで企業戦士として頑張っていた時、気がつけば、
慣れない外国の環境へのストレスから家族に笑顔がなくなっていました。
家族の笑顔を取り戻したい。
そのためには、家族ともっと多くの時間を過ごせるライフスタイルに変えよう。
その答えが彼にとっては「農業」でした。
幼い頃、父が庭で鶏を飼っていた記憶から自分にもできそうだと思ったこと、
それに初期投資も少なくて済みそう……との目論見が養鶏を選んだ理由でした。
しかし、起業してすぐに養鶏で家族を養うことの現実に直面。
彼の試行錯誤が始まりました。元ビジネスマンである強みを活かし、
事業の設計や自分なりのこだわり、原価計算など経営面でのアドバンテージはあったものの、
自分の「売り」を見つけられずにいました。
農業も養鶏も好きじゃなかった僕が、
家族のために、
家族の健康を考えて始めたたまごや。
真実の物語が、コンセプトになりました。
彼の餌や鶏の飼い方へのこだわりは、全て家族のため。
妻や娘のことを頭に描きながら、家族に食べさせたいたまごをつくり続けてきた……。
そこから、ロゴが出来上がりました。
そして、烏骨鶏卵「妻のためのたまご」、
国産鶏卵「娘のためのたまご」という商品名が生まれました。
商品説明には、商品への想いを込めた妻と娘へのそれぞれの手紙形式をとご提案し、
ご本人に文面を考えていただいたのですが、
彼は本気で妻と娘に心を込めて長い手紙を書き、
それを当の本人たちの前で読んだら家族で号泣してしまったという
心温まるエピソードのおまけがつきました。
よく、「差別化」という言葉が使われます。
差別化には、強みと思われるものを「盛る」のでなく、
どんどん「脱いで」「捨てて」いくことも大事じゃないかなぁと思います。
裸になった時に、何が残るか。
残ったものが心の声。正直な物語は、響きます。
本格的な加工品第一弾のマヨネーズの商品名は、
「僕のためのマヨネーズ」。
「僕、マヨネーズ嫌いなんですよね。だから、
自分が納得するマヨネーズをつくってみたいんですよね」
それがそのままコンセプトになりました。
そして、第2弾のマヨネーズは、
第1弾が「僕のため」だったので、「君のためのマヨネーズ」。
君とたまごの黄身をかけています(笑)。
芯・軸となるものが決まると、その後は正直な想いの発露が
エンジンとなって次にやるべきことの優先順位や、
さらにメッセージを乗せていきたい商品やサービスのアイデアも浮かんできます。
「芯・軸」=「根っこ」が、ブランドの方向性を決め、ネーミングとなり、ロゴとなり、
商品パッケージのデザインになっていきます。
webサイトで何を見せればよいのか、どう発信したらよいのか、が見えてきます。
これが、「てかまえ」の
基本的な進め方です。
頭では理解できても、実際に自分(たち)だけで裸になるのは、
なかなか難しいなぁという皆さま。
脱がせのプロにお任せください(笑)。
気持ちよく脱いでいただき、奥に隠れていた宝物の破片を引き出してきて、
丹念に丁寧にひとつずつ組み立てていって、
自然で無理のない物語をご一緒に紡ぐお手伝いをいたします。